線維筋痛症
線維筋痛症は明らかな外傷や要因ががないにも拘らず、全身に強い痛みや倦怠感、胃腸障害、手足のこわばり、うつ状態、睡眠障害など様々な症状が発生する病気です。このように様々な症状が出現しているにもかかわらず、病変は血液検査や画像検査で原因を特定することが非常に困難です。
原因
線維筋痛症の原因は今のところ不明となっています。ただ有力な説として、痛みを伝える機能(アクセル)と痛みを抑制する機能(ブレーキ)が何らかの原因で障害されてしまい、痛みを過剰に伝えたり、抑制が効きにくい状態になっているのではないかと考えられています。

症状
線維筋痛症の主な症状は【強い痛み】です。線維筋痛症では痛みが生じる場所は指の先から身体全体まで多岐に渡ります。また、痛みの強さや質も日々変化していきます。まさに流動的な痛みと言えるでしょう。他にも【疲労感】【倦怠感】【こわばり】【抑うつ状態】【睡眠障害】など多様な症状が出現し日常生活を妨げます。

診断
線維筋痛症の診断基準としてスクリーニング検査があります。
①広範囲(右半身/左半身、上半身/下半身、体軸)に3ヵ月以上の痛みが続いている。
②図に示された18か所の圧痛点を指で押して11か所以上が痛む。
※②に関しては医師の判断により11か所以上なくても線維筋痛症と診断されることもある。
※このスクリーニングの前に、リウマチ検査や血液検査を実施し線維筋痛症以外の病気や怪我の可能性を排除しておく必要があります。

治療
線維筋痛症は発症の原因が確定できていない為、明確な治療法は存在していません。現在でも医療方法の研究は進められていますが、今のところ患者個人の状態に合わせた治療を多角的に行っていきます。

薬物療法
線維筋痛症では、【痛み】【こわばり】【抑うつ症状】【倦怠感・疲労感】【睡眠障害】などに対して、医師より薬が処方されます。処方される薬は抗うつ薬や睡眠導入剤といった薬を組み合わせて経過を見ながら調整していきます。

運動療法
線維筋痛症では、痛みを我慢していく事で筋肉が緊張し硬くなる傾向があります。筋肉が硬くなると、その周辺に痛みが強く生じる場合があります。この為、こわばりの予防や筋肉の柔軟性を維持するためにストレッチや軽めの運動を行う事が推奨されます。

認知行動療法
線維筋痛症では、強い痛みが生じるため、活動のための意欲や自信を無くしてしまう事が、見受けられます。この為、【認知行動療法】を取り入れて、現在の自分の状態を客観的に受け入れる事で、【出来ること】と【出来ないこと】を正しく理解し、日常生活の行動から病気の改善を図っていく場合もあります。
リラクゼーション
線維筋痛症では身体の痛みが強くなる事で、自律神経に障がいが起こる場合があります。自律神経が乱れて交感神経が優位になると、痛みに対して敏感になったり筋肉が緊張してしまうことになります。また、緊張状態が続く事で、精神的にも疲労してしまうため、【入浴】や【マッサージ】などを行う事で心身ともにリラックスを促すことも効果的です。

まとめ
線維筋痛症の治療効果を十分に発揮するためには、病気の早期発見が大切なカギとなります。また、線維筋痛症の治療には波があり、痛みが軽減したり強くなったりを繰り返しながら、徐々に弱い痛みで安定していくケースが多いようです。
完全に痛みが消えてしまうまでには、長い時間を要する事もありますが、痛みがあっても、少しずつ出来ることは増やしていけますので、諦めずに治療を継続する事が重要です。
また、現在でも様々な研究が進められていますので、今後、線維筋痛症の特効薬などが出て来る可能性も十分に考えられます。希望を捨てずに日々を過ごしていきましょう。